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美に沿う形(DAISY CHAIN vol.12より)

DAISY CHAIN vol.12の掲載作品『美に沿う形』、美術を題材にした中編小説で著者は瑞穂はじめ、とあるが、これはたぶん羽岡元さんの作品である。なぜそう思うかというと、男と、女と、鬱屈した男が描かれているからだ。前作の『レミングの日』にはちょっと不満があったが、本作はとても楽しく読めた。読み進めるのを止められなくて、ミスドでコーヒーを2回もおかわりしたくらいだ。(僕は一日にコーヒーを3杯以上飲むと具合が悪くなる。)これは僕が勝手に思っていることだが、作家というものは一生同じことを書き続ける。したがって、『美に沿う形』の作中でも語られているように、何を書くかがとても重要なのである。美術とそれに向き合う人々は、羽岡さんが書くべき対象なのだろう。

http://www.mogra.co.jp/daisy/
(DAISY CHAIN vol.12の情報はのってない…)

僕は美術とかわからないし、何かに真剣にうちこむ学生の姿を見たことがないので(僕が歩んできた人生に問題があるのだ)、本作で描かれているあらゆるものは新鮮で、すごく細かいところまで書いてくださっているので美大の学生たちにまじっているみたいな気持ちになれた。僕は平野という人物が好きだった。彼は真面目で、美術というものに正面から向き合っていた。彼の目線で描かれるものは、絵画であり、石膏像であり、モデルとしての人物であり、画材であった。実直で、素直で、生活力に乏しく、きれいな女に声をかけられればコロッといってしまう彼に、長期的な利益ばかりを考え、生活力に長けた、表面的には実直に見せかけた善くない人間たちが抱くのは、ファンタジー的な好意なのかもしれない(我ながら変な表現だが)。絵画のことばかり考えている彼と一緒の時間は、楽しくてあっという間に過ぎていった。

一方でトビオという人物は、ひねくれていてあんまり好きではなかった。彼が優先するのは全体の中の自分の利益であり、まるで美術がその手段みたいに扱われていた。彼の目線で描かれるのは、美術の世界の構造と、そこに身をおく人間たちなのであった。彼の意識はルサンチマンとうぬぼれにまみれていて、そのうえ無自覚だ。一方で、そんな彼があるいみ極限状態で発した、たったひとことの正直な言葉が、もっとも美しいものとして描かれているというのは、皮肉っぽくもあるし、本当に光り輝くものとはそんなものかもしれないな、とも思える。本作において、平野の目線で描かれる美術としての(あるいは定言的な)美術と、トビオの目線で描かれる美術の構造を俯瞰した世界とは完全に分断しているのだが、最終的にはトビオの価値観が全てを覆いつくす。まるでディストピアだった。先に書いたように僕は美術とかわからないが、ラストは何か寂しい感じがした。

テーマ:読んだ本の感想等 - ジャンル:小説・文学

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