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千刺万紅 - After the Endroll

 ひとりの人間の人生を描こうとするなら、その人をとりまくたくさんの人々を描かないわけにはいかないだろう。なぜなら、それをしないというのはピントのあわないレンズみたいなもので、スクリーンにだれの目にもそれが人間だとわかるような像を結ばないからである。人間のかたちを、他のだれか、あるいは自分自身に認識させるのは、現在と過去において交わってきた人々であり、その人間の肌の質感や軽薄さ、歯並び、毛穴の形状、わがままで気まぐれな性格、騙されやすいところや、あるいは慎重さ、服のセンス、預金残高、苦手な食べ物といったディティールを描くことができるのは、彼らにおいて他に無い。

 しかしながら、ひとりの人生の物語は群像劇とは違う。たくさんの登場人物はみな個性的ではあるが、彼らの物語は断片的にしか語られないし、結末を見届けることもできない(見届けたつもりにはなれる)。ある人生を視点として選択した場合、その他の人間はみな舞台装置に過ぎなくなる。あなたは、それを寂しいと思うかもしれないし、ひとりの確かな存在、すなわち人生の主役が物語と共にあり続けることを、頼もしく思うかもしれない。

 シアワセモノマニアの青波零也さんと砂紅果香(高村暦)さんの共著『千刺万紅 - After the Endroll』は、もともとはシスルの人生を描くことが目的ではなかったのかもしれない。(あとがきからは、そんなふうにうかがえる)終末の国を舞台に、七つの曜日を冠した連作として制作された本作には、それぞれに魅力的なキャラクターが登場する。鳥の塔の秘密を追いかけるアリシア、その塔の代行者として実力を行使する立場でありながら、ある不安を抱えたシルヴィ、郵便屋のアネモネに、天才科学者ウィニフレッド…みな、読書を終えた僕にとって忘れえぬ人々で、シスルにとっても同じであろう。彼女たちとの出会いと交流、そして別れのひとつひとつが、彼のたった一度の人生がいかに素晴らしく、いかにかけがえのないものであるかを、まるで絵の具をキャンパスに乗せるように、大切に描いていくのである。

http://happymonomania.sakura.ne.jp/book/
http://books.doncha.net/happy-reading/detail.pl?uid=63146440&bookid=152

テーマ:読んだ本の感想等 - ジャンル:小説・文学

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