Latest Entries

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

連絡通路

白草さんの『連絡通路』第十回文学フリマで買って今日読んだ。こんなに感想を書くのが難しい本ってない。けど、読んでいる間は他のことが目に入らなかったので、面白かったことは確かだ。

この本には3つのタイトルが収録されているが、どれも筋書きはあってないようなものだ。1話目などは話の筋を通すのに失敗しているとすら思える。しかしそれが大して気にならないのがこの本の不思議なところで、それはたぶん特徴的な主観の描き方からきているのだと思う。

3つあるタイトル全てに共通して、主観を通しての描写が恐ろしいほどの密度で描かれている。筋書きを重視する小説においては早回しで描写されがちな日常の退屈な部分を、早回ししない。現実時間、またはスロータイムとでも表現すべきか。例えばこんな描写がある。

 テレビの中では、叩きつけるような雨の中、合羽のフードを抑え、鬼気迫る表情で男のキャスターさんが現場の被害状況などを事細かに伝えていた。体張ってるなぁ、と思う。命を懸けているのかもしれない、とも。私には絶対できないことだから、頑張れなんて心の中でエールを送る。
 彼の雄姿を見せてやろうとノビの脇の下に両手を差し入れて、不機嫌な声を上げる彼女を持ち上げる。猫十字架のできあがり。


上記は本文からの引用で、台風がやってきて過ぎ去るまでの間のヒトコマであるが、重要なのは、話の筋書き上ここで「男のキャスター」を登場させる理由はひとつもない、という点だ。主人公の心情を暗に描写するなどの役割もかっているわけでもない。主人公が思うのは、「体張ってるなぁ、」という程度のことだ。そしてもちろん猫十字架はなんの伏線でもないし、それどころか主人公が猫の「ノビ」を飼っていなかったとしても、筋書き上はなんの支障もない。冗長な、削ってしまってもよさそうな部分に見えるということだ。

ところが、実際読んでみると、そういう見え方にはならない。主人公が見たこと、というよりたまたま目に映ったこと、そのとき感じたこと、思ったこと、行動のすべてを、スロータイムのレートで、頭の中にビデオデッキを仕込んだかのように描写した小説、それが本作であるとするならば、上記の引用部分は、あって然るべき描写だということになる。

本作は実際にそういう小説であって、上記のような、一見して脈絡がないともとられる描写の積み重ねによって構成されており、それが面白味になっている。冗長性を楽しむ作品なのだと思う。モノローグで延々と喋り続ける映画を一本見た後のような読後感を得られる不思議な小説で、文章による娯楽の多彩さを思い出させてくれる。

テーマ:同人小説 - ジャンル:小説・文学

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://0tas.blog118.fc2.com/tb.php/282-ec06bd40

«  | HOME |  »

2017-06

  • «
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • 6
  • 7
  • 8
  • 9
  • 10
  • 11
  • 12
  • 13
  • 14
  • 15
  • 16
  • 17
  • 18
  • 19
  • 20
  • 21
  • 22
  • 23
  • 24
  • 25
  • 26
  • 27
  • 28
  • 29
  • 30
  • »

プロフィール

 

0tas

管理人:佐藤(サークル代表)
0tassat0@gmail.com
http://twitter.com/0tas
同人誌の情報はカテゴリー→告知をご覧下さい

 

カテゴリー

最近の記事

最近のコメント

リンク

最近のトラックバック

月別アーカイブ

ブログ内検索

 

 

RSSフィード

 

アンテナ

 

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。