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ハヴォルスキー卿の冒険

水河健 氏の『ハヴォルスキー卿の冒険』を読んだ。この間、第八回文学フリマで買わせていただいたものだ。

みずましPomta屋
http://ro-fake.hp.infoseek.co.jp/pomta

高川ヨ志ノリ氏によるフルカラーの表紙には、都市をバックに気球に乗った怪しげな中年と美少女、黒のスーツを纏った鋭い眼光の青年などが描かれ、『痛快無比』、『七転八倒』、『娯楽小説』という文句で飾られている。怪しげな中年の正体は小説のタイトルになっているハヴォルスキー卿であり、物語は彼の登場により幕をあける。

「ご覧ハニー。これが世界に冠たるトランシルバニアの都さ。僕にとっても五年振りの帰郷だよ。ああ、懐かしきオプティヌマの女王に乾杯さ」


怪盗という役どころや、彼の度を過ぎてロマンチックな台詞にツッコむナレーションなど、どこか古臭い立ち上がり。しかしそこがかえって『痛快無比』な『娯楽小説』を予感させる。そんな予感の通り、ナース・ファリーの財宝を狙うハヴォルスキー卿と、彼を追う若き治安局員ラウルのドタバタを軸に物語は展開される。

この作者は(実際はわからないけれど)、筆の早いタイプの方なんだろうな、と思う。流暢な文章の運びから、軽快なタイピングが想像される。3行進めては2行戻るような私(しかもあとで相当直さないと読めない)とは対照的で、ボキャブラリーも豊富なのだろう。ひとつのことを説明するのに、傾向としてなるべく少ない語で表現する方と、言葉に言葉を重ねて多くの語をもって表現しようとする方とがいるが、水河氏はきっと後者のタイプだろうな。豊富な語彙により語を重ねていく文体が、場面によっては勢いを殺していることもなくはないが、総じて安定して読める。個人的には非常にうらやましい才能である。

難点はそれほどないのだが、序盤からコメディタッチで描かれている物語なのに、中盤でハヴォルスキー卿を追う側の組織間の確執がウェイトを占める部分があって、ちょっと重いなあと感じた。後に続く物語を成立させるために必要な部分だとは思うのだけど、もっと軽く、もしくは短くしても良いのではないかと思う。それから、ハヴォルスキー卿の描かれ方だが、運に頼る部分が多かったり、人物としての魅力を説明するような描写が無かったりして、ちょっと小物に感じる。彼が主人公よりも一枚上手の人物として描かれることで成立している物語なので、もっと見せ場があっても良かったのではないかと思う。

けれど全体として安定して読ませることに間違いはないし、ラストの空中戦は盛り上がった。かなり豪華な造りの本だが、見た目を裏切らない中身であった。じめじめした性格の私には、こういう小説はこの先も書けないだろう。本誌を含む全三部作となっているようなので、機会があればぜひ続きも読んでみたい。

テーマ:同人小説 - ジャンル:小説・文学

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