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ガリア女

牟礼鯨さんの『ガリア女』は第十三回文学フリマで買った。

http://www25.atpages.jp/murekujira/bunfree.php

サークル西瓜鯨油社、ならびに牟礼鯨さんの作品に対しては、同人小説としてはめずらしく賛否両論ある。(ウェブ上でそれらの意見を探すのは困難だが、存在することは確かだ。僕がさまざまな場所で耳にしたことが全て幻聴でない限りは。)意見があるということは、それだけ読まれているという証拠だ。発行部数と「読まれた部数」が必ずしも一致しないのが同人小説であり、後者は肯定または否定の意見でしかカウントできない。

牟礼鯨さんの本はこれまで何冊か読ませていただいているが、今回の短編集が一番好きだ。ひょっとすると氏にとっては不本意かもしれないが、何が面白いを読者が判断してよいとするならば、『ガリア女』が一番おもしろい。

語り手自身の描写に対するこだわりがあって、例えば表現が、わざとモッタリさせてある。以前の短編集や長編では語り手は無個性に徹している感じがあったが、今回は語り手に個性がある。現代を舞台にした作品ということで、モッタリ感がいい具合に語り手のニュアンスを描いているのである。こんな表現がある。

そして指先がプールの側面のざらざらさに触れたときにすべての力を抜いて浮上する。


僕の感じているモッタリ感がわかっていただけるだろうか。しかも「ざらざらさ」である。(皮肉などではなく、この表現には氏が天才であることを再認識させられた)こういった細かな表現や不意にカットインする心情の吐露が、語り手をごく自然に造形することに成功している。作品ごとに、ウブな若い男が年上の女にもてあそばれている場面や、三枚目の小太りがシャワー室で必死に腰を振っている姿が思い浮かぶのだ。

話の筋のキレっぷりは異常。ギャグ漫画なみに冴えている。騙されたと思って読んでみるといい。あなたは読みながら何度もこう思わされることだろう。「マジか」、と。短編を読む醍醐味が、この小さな本には凝縮されている。

ところで作者本人によるレポートによれば、同イベントでの本作の頒布数は計44冊だったそうである。噴飯である。出展者含めて約3,600人が参加して、この本が44冊しか出ないとは。文フリのバイヤー終わってるといわざるをえない。3,555人終わってる。この本は100円だったのである。100円といえば代々木から新宿までの電車賃より安い。新南口までなら、たったの徒歩5分だ。5分歩けば浮かせられるだけの金を、3,555人がなぜ払わない。
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テーマ:同人小説 - ジャンル:小説・文学

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